無酸素こそ高所登山最大の問題で、人工的な酸素補給は
その障壁を取り去るに等しいと小西は考える。
無酸素で 8000m 峰に登るのがどれだけ大変なことか。それはエベレストのネパール側第 4 キャンプ( 7950m )に使い古しの酸素ボンベのごみの山があることで察せられる。 1999 年春にエベレストの頂に立ったのは 117 人いるが、無酸素だったのは 5 人だけだった。
小西が北陽高校二年、登山を始めて二年が経過した 1978 年、イタリア人のラインホルト・メスナーが人類で始めてエベレストを無酸素で登頂した。
8000m の高所はデスゾーンと呼ばれ、人体の限界に近い。低酸素(酸素分圧量 30 %)、低気圧(平地の三分の一)、低温(マイナス 10-35 度くらい)。これが自然条件になる。人間の体の構造条件を超えたところに、それも酸素ボンベを使わずに登ることは並大抵のとこではない。低酸素によって、精神的にネガティブになり、怒りっぽくなり、泣いたり悲観的になる。かと思うと、突然、ハイテンションになったり、感情が極端に不安定になるのだ。そして、低気圧はひどい頭痛をもたらす。高度順応を怠れば、発熱し、喉がいたくなり、風邪に似た症状が出る。早く登ろうとすると体が酸素を取り入れなくなる。どのくらいのスピードが 8000m 峰の登山に適しているのかは、己の経験からしか知りえない。